骨なしチキン

L:Q/トワ主/二次創作/捏造妄想

ちょっとあれなトワ主SS【L:Q】

ツイッターでけも耳トワダさんに盛り上がり夜中に一人でテンションが急上昇した結果の産物です。所謂二次創作ですトワダさんにマジもんのねこの耳としっぽ生えてます。『罰ゲーム』は魔法の言葉、ネコ様ならなんでも出来る。

 

 

 <あらすじ>

いつものように開催されたとあるボーナスゲームで残念ながら失敗してしまったトワ主。しかし、今回はどちらか一方が罰ゲームを受けるだけでよいという。彼女が引きとめるもじゃあ俺で、とあっさり手を上げたトワダはいささか残念そうなナナシの不思議な力により――ねこの耳としっぽが生えてしまったのだった!ワーたいへんだ!

 

 

 

「……いや絶対におかしいでしょう!!」

 

先程までのゲームおよび経緯を振り返っていた私は、何度目かになる現実の否定を繰り返していた。

「なんだ、まだ騒いでんのか。ちょっとは落ちつけよ」

小さなテーブルを挟んで向かい側、ソファの上にごろりと寝転がったトワダさんが、くああ、と大きな欠伸をしながら眠そうに告げる。ゲーム終了後、流石にこの姿のままホテルに戻れば騒ぎになるだろう、と、私の部屋に連れて来たのだ――今日が有給だったのは幸いだった(ゲームのある次の日はなるべく休みを取るようにしている)。

あまりにも普段通りのその姿に一瞬現実を忘れかけるけれども、彼がぐぐ、と伸びをした瞬間、頭で揺れる一対の耳に我に帰る。

「……というより、何でトワダさんはそんなに落ち着いてるんですか!しかも今ちょっと寝てましたね!?」

「眠いんだから仕方ないだろ……おまえも寝ろよ、ゲームは終わったんだし」

「この異常事態じゃ眠る気になれないですよ……」

がっくりと肩を落とした私を面倒くせえなあ、とでも言いたげにみやり、彼は気だるそうに身を起こした。その姿を目で追っているとこいこい、と手招きされ、言われるがままソファの傍に身を寄せるとぽん、と頭に手のひらが乗る。

「お前が騒いだってこれが消えるわけじゃない。そもそもネコの野郎は24時間で元に戻るって言ってたし、あいつがそう言うならそうなんだろ。」

「そう、ですけど……」

「あのネコが摩訶不思議なことすんのは今に始まった事じゃねえし、今のところ俺は別になんともない。ま、騒ぐとしてもーー明日になってもこれが消えてなかったらだ。だろ?」

「……はい」

理路整然とした説明にこくりと頷くと、トワダさんは満足そうに笑った。問題が起きている当の本人なのに彼は平然としていて、しかも私を宥める余裕すらある。それに引き換え私は慌てるばかりで、……こういう瞬間、やっぱりこの人には敵わないなあ、と思う。

「しかし、こんな罰ゲームだって分かってたらお前にやらせたのにな。ネコの野郎も気が利かねえ」

「さっき尊敬しましたけど今すぐ取りやめますね……」

なんだよ、こんなの男に付けたって面白くもなんともないだろうが。不満げに唇を尖らせる彼の頭上で、それに呼応するかのようにぴこぴこと耳が揺れる。

(……冷静になってみると、)

これはあまりに異常だ。異常だけれども……それはやわらかそうで、そうしてふわふわとしている。ぬいぐるみのように。あるいはそれそのもののように。良く出来ていて、出来過ぎていて、つまりーーかわいいのだ。とてつもなく。だって耳だ。しかも、ねこの。

「なに、触りてえの?」

触りたい――でも流石にそれを言うのは憚られる。この非常時に。私がうずうずとした気持ちを必死に押さえ付けていると、トワダさんがちいさく笑って尋ねてきた。膝の上に頬杖をついて、面白がるように顔を覗きこまれる。

「そっ、それは、……その」

「じゃあいいんだな?」

「さ、!……さわりたい、です」

素直なのはいいことだぜ、小学生。にやりと笑った彼がソファの隣とぽんぽんと叩く。大人しくそこに腰を下ろすと、トワダさんは私の膝の上に頭を乗せてソファに丸まった。柔らかな髪がふわふわと触れ、少しだけくすぐったい。

「いいんですか?」

「ま、今日一日匿って貰うしな」

好きにしろよ、膝は借りるけど。と言ってトワダさんが目を閉じる。私はどきどきしながらそうっと髪の合間で揺れるそれに手を近付けた。

(……わ、)

見た目通り柔らかなそれはほんのりと温かく、まるで本物のねこのそれのようだった。艶やかな茶色の毛並みがふわふわと指先をくすぐり、たやすく手のひらの中でその形を変える。あまりにも出来の良いその感触に夢中になっていると――トワダさんがぴくりと肩を震わせ、小さく呻く。

「っ、」

「!す、すみません!もしかして、痛かったですか……?」

「……や、ちげーけど。」

きゅっと眉を顰める姿に慌てて手を離すと、トワダさんは一つ咳払いをして苦笑した。お前、慌てすぎ。

「別に触ってていいっつの。……しかし、女ってこういうの好きなのか?」

「そうですね……ふわふわしていたり、かわいいものは、やっぱり心惹かれますね」

「はあ……かわいいとかマジで言ってんのか?イイ歳した野郎にこんなの付いてたって、俺は気味悪いだけだけど」

「そうですかね……私は、いいと思いますよ」

そんなことを言い合っていると、なんだかひどく穏やかな心地になる。最初こそ慌てたけれど、たまには……ほんのたまになら、こういう罰ゲームも悪くないかもしれない。

楽しくなって小さく笑っていると、不意に腕を柔らかなものがかすめる。私がびっくりしてそこに目をやると、耳と同じ色をした長いしっぽがふわふわと肌を撫でていた。

「ちょっ、トワダさん、くすぐったいです」

「おお、耳は頂けねえがこっちは割と便利だな……」

「っ、あはは、もう!」

器用に揺れるしっぽは腕にやんわりと巻き付いたり、首筋をくすぐってみたり、頬をやさしく撫でてみたりと好き放題をする。私は狭いソファで身をよじって抵抗するけれど、膝枕をした状態でさほど大きな動きが出来る筈もなく。

「かわいいとか言った罰だ。散々人の身体を弄びやがって」

「と、トワダさんが触っていいって言ったんじゃないですか!~~もう!」

あちこちを擽るそれに反撃すべく私はトワダさんを見下ろして――咄嗟に、無防備にさらされていた喉元に手を伸ばす。まさか耳としっぽが生えているとはいえ効くはずがないだろうけれど、ちょっとしたお返しだ。

……そう思っていたのに。

「ん、……」

「……え?」

ごろごろごろ。

そうっと、ねこにするように指先でやわく喉を撫でた瞬間だった。とろり、とトワダさんの瞳がゆるんで、心地よさそうに目が細められたかと思うとーー喉からぐるる、と唸るような音が聞こえて、二人ともが動きを止める。

「……」

「……」

「……トワダさん、今」

「……さーて、寝るか!もういいだろ」

「トワダさーん?」

「おい馬鹿やめろ離せ!くっそネコの野郎!妙な再現付けやがって!!」

がば、と身体を起こそうとしたトワダさんをぎゅうと押さえ付ける。じたばたともがくのを何とかいなしてもう一度そこに触れると、びく、と一瞬だけ身体が硬直してーーやんわりと力が抜ける。

ぐるぐる。ごろごろ。

「ほ、本当にねこみたいですね……」

「……」

もう隠しても無駄だと悟ったのかーートワダさんは、膝の上で諦めたように目を閉じて撫でられるがままになっている。それでもささやかな抵抗のつもりなのか盛大にしかめっ面をしているものの、耳の後ろやあごの辺りを指先で擽るとそれも緩むのであまり意味がないと思ってしまうのは私だけだろうか。

ぐるぐるぐる。

だらん、と脱力して垂れたしっぽと、小刻みにぴくぴく震える耳と。私が触れる場所によって、意地を張るかのように顰められた眉が緩むのが楽しい。

普段は余裕綽々な彼を少し手玉に取れたような気分になって思わずかわいいですね、とこぼすと、不意に閉じられていた目がぱちり、と開く。

ーーーあ、やばい。

一瞬にして背筋を駆け抜けた所謂「嫌な予感」、あるいは長らく彼と付き合ってきて得た「"獲物"のカン」が脳に警鐘を鳴らしーー私は慌てて彼の身体から手を離す。……が。

「あの、トワダさ……きゃっ!?」

「……」

手を離したのは失策だった。間違いなく。

するりと身を起こしたトワダさんはまるで手品のように軽々と私をソファから抱え上げる。目を白黒させているうちに気が付くとベッドに運ばれていて、トワダさんが私を楽しそうに、実に楽しそうに見下ろしていた。

「……"かわいい"?」

「ひっ」

とん、と顔の両側に手が置かれて逃げ道がふさがれる。そのまま近付いてくるトワダさんの身体を全力で押しのけようとするが勿論敵う筈もなく、じりじりと距離が詰められていく。

「とっ、トワダさん!疲れてますよね長々すみませんでした!寝ましょう!ね!?今すぐ!!今!!」

「だから今から寝ようとしてるだろ……?」

「寝るの意味が違います!!……や、っ」

首筋にちう、とキスが落とされて思わず肩が震える。身体を起こしたトワダさんが愉しげに目を細めーーちろり、と舌先で唇を舐めた。ああ、捕食者の目だ。愛玩されるねこのなつっこいそれではなく、視線の先の獲物を狩るための。

「っ、う、」

「……イイ顔だな」

く、と喉を鳴らした彼に、先程まで私がからかえていたような面影はない。そもそも、そんなことが出来ていた方が奇跡だったのだ。油断した。いつもながら。

「これでもまだ、かわいいって?」

「瞳孔、開いてますよ……」

今度は私が諦める番なのだろう。せめて顔をふい、とそむけて零すと、トワダさんはひどく愉しそうに笑った。そりゃ悪いな。

「獲物が目の前で無防備に油断してたら、捕食者としちゃ狩るしかねえだろ?」

「油断してな……いとは言えませんけど!っ、わ、」

「はいはい、もう黙ってな」

するりと服の裾から潜りこんできた手のひらに意識が奪われ、身体から力が抜けた拍子にぐっとトワダさんが近付いて、熱のこもった吐息が頬に触れる。

「ちゃあんと残さず美味しく頂いてやるから安心しな」

「ば、かじゃないんですか……!」

耳に滑り込む低い声に身を震わせてぎゅう、と目を閉じる。このあと訪れるであろう時間に胸を痛いほど高鳴らせながら、私は少し前の自分に向かって言葉を投げかけた。

訂正――やっぱり全然、かわいくない!