骨なしチキン

L:Q/トワ主/二次創作/捏造妄想

トワ誕生日SS【L:Q】

ばたばたしてたらこんな時間になってしまった……!

トワダさんお誕生日おめでとうございます!ギャーッ!!まじですごいギリギリになっちゃったけど好きだ――――――!!!!大好きだよーーーーーー!!!!

 

要約:私がプレゼントをマジで実行しました。

そんな感じの話です。これ祝ってるって……いえるかな……。うん、まあ、その、書いててたのしかったんです……それだけは本当です……。

それでは以下から所謂二次創作お誕生日おめでとう文です。大丈夫だよ!読んでやるよ!なお優しい方はどうぞ。

 

 

(……よし)

 

心臓が、痛いくらいにばくばくと高鳴っている。

トワダさんの誕生日当日。私が主体でプランを立てたデートも、いつものメンバーに相談しながら試行錯誤して決めたプレゼントもとても喜んでもらえた。ディナーを終え、まだ時間を頂けますかと彼を私の部屋に誘い――今日のプランの中で恐らく最も緊張するであろうことの準備が整った。

「……あの、トワダさん」

「どうした?」

深呼吸をひとつして、先程淹れたコーヒーを前にソファでくつろぐ彼の傍に近寄る。

「実はもうひとつ、プレゼントがあるんですけど……」

「お?何だ、今度こそ“私がプレゼント”か?」

トワダさんは一瞬驚いたものの、すぐいつもの余裕の表情でニヤリと笑った。可愛がってやるから来な、とからかうようなトーンで軽く広げられたその腕の中に、失礼します、と身体を滑り込ませて腰掛ける。この状態も相当恥ずかしいけれど、この後に比べたらまだ許容の範囲内だ。

背後の戸惑ったような気配に気付かない振りをして、私は用意しておいたリボンを急いで手首に巻いた。焦りながら結んだそれは利き腕とは逆でしたこともあってか少し不格好だったけれど、その艶やかな濃紫を見つめて、きゅ、っと手を握りしめる。

「……言われたことをそのままやるみたいで、面白くなくてごめんなさい」

掠れそうになる声で続けながら、くるりと後ろを振り返る。リボンと私の顔に交互に視線をやって、ぽかん、とした顔をする彼の前にそっと手を差し出した。

「……ど、どうぞ」

「は……?」

所謂、私がプレゼント、というやつです。

そう告げると、トワダさんは一瞬驚いたような顔をして――それから、すうっ、と目を細めた。

「……へえ?」

低く笑った彼は、半端に広げたままだった腕で私を抱き寄せると、そのままの動きで身体のラインを指先で怪しくなぞる。思わずびくっと跳ねた肩に顎が乗せられて、愉しげな声が耳元に響く。

「プレゼントってことは、俺に何されてもいい、っつーコトだよな?」

「は、……はい」

――出来ればあんまり良く分からないことと恥ずかしいことは勘弁してほしいです、が!

内心で小さく悲鳴を上げつつ、逃げ出しそうになる自分を叱咤する。

(今日は頑張る、って、決めたんだから……!)

トワダさんの誕生日を迎えるまでに何度となく繰り返した決心を胸中で浮かべ、ぽふ、と彼の身体に背中を預ける。全身が緊張でがちがちなのはその、少し多めに見て欲しい。

「……ふぅん?」

ぽつんと呟いた彼は、そのままなぞるように手のひらを移動させ、ひょい、とリボンが付いた方の腕を掴んだ。されるがまま黙って見ていると、指、手のひら、やわい腕の内側、肘の辺りをくるりとなぞって、無骨な指先が器用にリボンの巻かれた手首だけを避けるようにゆっくりと肌の上を滑る。上から下へ。先までたどり着いたらまたそろそろと、同じ手順で繰り返し、繰り返し、まるで地図でもなぞるみたいに。そうして、時折別の手が首筋や、耳元に触れる。

(く、くすぐったい……!)

思わず身をよじると、心臓に響くような低い声が耳元で唸る。

「じっとしてろ」

「ご、ごめんなさい……!」

ぎゅっ、と手を握り締めて堪えると、腕を擽っていたトワダさんの指先が手のひらの方にやってきて擽るような動きでかり、と内側を軽く引っかいた。その仕草に思わず力を緩めれば、潜りこんだ指先に解かれるように手のひらを広げられて指が絡む。そのままやんわりと握り締められては解かれる動きは、余計な力を抜けと言われているようで。

……それにしても。

「あの、トワダさん……?」

「んー?」

それから後を耐えてみても、トワダさんは一向にそれ以上なにもしてこない。ただ、あちこちにそっと触れて行くだけだ。

「どうした、小学生。もう降参か?」

「……いえ……違いますけど」

まさか「何もしないんですか?」なんて聞く訳にもいかず、ふるりと首を振る。

いつもならすぐに、もっと、こう。不意に脳裏をよぎった考えに顔が熱くなりかけて、慌ててぶんぶんと頭を振る。

「それならちょっと黙ってろよ、プレゼントさん?」

「……うう」

何か考えれば余計なことが浮かび、愉しげな彼の行動の意図もさっぱり分からない。どうしようもなくなって目を閉じ、唇を噛みしめながら暗闇の中で指の動きだけを追っている、と。

(……ん、?)

なんか、変な感じ、というか。落ち着かない、というか。

暫く経った頃だろうか。不意に、そわそわとした心地が背筋の辺りをぴりぴりと走るようになって戸惑う。

くすぐったいのとはまた違う感覚にきゅっと眉を寄せる。少し手の止まった瞬間にこぼれた吐息はやけに熱がこもっていて、妙な気恥ずかしさに思わず身じろぎをする。

「こーら。じっとしてろつったろ」

「あ、……!」

腕を掴んでいるのとは別の手がするりと脇腹をくすぐり、その瞬間驚くほどびくりと身体が跳ねる。堪え切れずに声を上げてしまったのが恥ずかしくて慌てて手で口を塞ごうとすると、やんわりとそれが押さえられてしまう。

「やっ、と、わださん……!」

「おいおい、なーに顔真っ赤にしてんだ?ただ……少し触ってるだけだろ?」

笑みを含んだトーンで煽るように囁かれて、かあ、と頬が一気に熱くなる。

(確かに、確かにその通りなんだけど……!)

戸惑っている間にもそのまま擽るような動きは続いていて、けれどその感覚は先程とは比べ物にならない。同じことをされているのに、ほんの小さな刺激にさえ、全身にぞくぞくしたしびれが走る。今までちいさく、ちいさく、すこしずつ溜められた熱を急に知覚したみたいに。

……でも、それだけだ。

(いやだ……もどかしい、なんて)

そんな考えが脳裏に浮かんで、思わず泣きそうになる。

だってこんな、じりじりと熱を上げられていくだけ、みたいなのは、ひどい。

せめてそれから少しでも気を逸らしたくて、半ば無理矢理に身体を縮める。ぎゅう、と丸まると、少しは熱に耐えられる気がした――のに。

「……!ひあっ」

うずくまり、露わになったうなじに感触が落ちる。ちゅ、とわざとらしく立てられたリップ音に恥ずかしくなって俯けば、それを咎めるようにやんわりと甘噛みされてのけぞった。さらけだした喉を指が撫で上げる。その少し苦しいはずのその圧迫感にさえ、この熱は上がっていくばかりで。

「……おいおい、随分と一人で楽しそうだな?」

内緒話でもするみたいに近付いて囁かれる声。そこに呆れるようなトーンを感じて視界が一気に潤む。ぐるぐると回る視界、ゆらぐ思考。たすけてほしい、この熱を、どうにかしてほしい。もっとちゃんと、

「も、トワダさ……っ」

羞恥も捨てて腕にすがりつく。きつく服を握り締めて目を閉じると、堪え切れなかった涙がぽた、とこぼれた。瞬間、身体がふわりと浮く感覚。

一瞬にしてソファに寝転がされて、ぱちぱちと瞬く。ほろほろと目じりから涙が伝い、クリアになった視界にトワダさんが映った。

「……煽るのが上手になったじゃねえか、小学生」

は、と短く息をついた彼が獰猛に笑う。愉しげに私を見下ろすその瞳にうっすらとこもる熱を見て、何故だかひどく安堵した。

するりと裾から潜りこんできた手のひらが肌を撫で、彼が顔を寄せた首筋にちりりとした痛みが走る。やがてもう片方の手が服のボタンに掛かり、ぷちり、とそれが外されていく音がした。

(……ああ、)

もう身を任せるつもりでぎゅっと目を閉じると、ぴたりと手の動きが止まる。

(……。……、……?)

そのまま動きがなくなったのを不思議に思い、恐る恐る目を開く。と、訝しげな表情で私を見下ろすトワダさんと目が合って、思わず首を傾げた。

「……おい、本当に食っちまうぞ?」

「え?」

何を言われているのか分からずぽかんとしていると、見る間に彼の眉間にシワが寄る。

「だーから、早く抵抗するなり逃げるなりしろって言ってんだよ。どうせ引っ込みつかなくなってんだろ?今なら許してやるから」

「……んんっ?」

抵抗?引っ込みがつかない?

急に態度を変えた彼の様子についていけず、私は必死に熱でぼやけた頭を回す。

「抵抗……?した方が燃えるとか、そういう……?」

「違ぇよ!!何の話をしてんだお前は!?」

「えっ!?トワダさんが言ったんじゃないですか!」

先程までの艶やかな雰囲気はどこへやら、お互いに困惑したまましばらく見つめ合う。どうやら認識に齟齬があるらしい、と気付いたトワダさんは、軽く身を起こして私の顔を覗き込んだ。

「おい……冗談なんだよな、これ?」

「じょう、だん……?」

「これだよ、これ」

訝しげな表情のままくい、と引かれたのは手首のリボンだ。すっかり形が崩れ、何とか引っかかっているだけのようなそれを指差されるが、一体何のことだか分からずにぱちぱちと瞬きを繰り返す。

「いや、だから帰ってきた時に言ってたプレゼントがどうとかいう……って、おい」

戸惑った表情で言葉を探していたトワダさんの切れ長の瞳が、何かに気付いたかのように見る間に大きく開かれる。

「お前まさか、今までの全部本気か!?」

「そう、ですけど……?」

「……マジかよ」

今日一番驚いた顔を見せたトワダさんが呆然としたまま凍りつく。その表情にやっと私も合点がいき、ゆるゆると身体から力が抜けて行った。なるほど、つまり。

「もしかして、ずーっと私が冗談か何かでこんなことやってると思ってたんですか……」

「……まあ、そういうことになるな」

道理で今日はだいぶ苛めてる割に中々降参っつーか、逃げ出さねえなと思った、と零す彼にあれやっぱり意地悪だったんだ……と思いながら深々とため息を吐く。

「私、冗談でこんな事出来ないですって……」

「いや、だってお前俺がちょっとからかうとすーぐ挑発に乗るじゃねえか。だからこれ、意趣返しかなんかかと……」

「それは否定できませんけど……」

まあ、からかわれたら勢いでやってしまいかねない気も……いやいや流石にそれは、と頭を振り、気を取り直す。

「その……なんだかすみません」

いつもとは違うというところを見せるつもりが、かえってトワダさんを戸惑わせる結果になってしまった。らしくないことを、こんな風に焦ってするものじゃなかった。反省して、困った顔でこの場をどうしたものかと考えているらしいトワダさんの前に正座して向き直る。

「トワダさん、もう一回、始めからやってもいいですか?」

「始めから、って」

「こういうのは、やっぱりちゃんと言葉にしないと駄目ですね。それが分かったので……だから、もう一回お願いします」

じっ、と見つめると、トワダさんは小さく唸って、それから私に合わせるように姿勢を正した。

気持ちを落ち着けるように何度か瞬きをして、それから少しだけ考えて口を開く。

「……その、こんな風にですね、恥ずかしい事を私から出来るのはたぶん、今日みたいな日くらいなんですけど」

手首でゆるく結ばれたリボンに視線をやる。その形を少し整えながら、一つずつ、自分の中で言葉を探す。

ずっと、今日を迎えるまでに私が考えていたことを、うまく伝えるために。

「勘違いされるのは仕方ないんですが、これ、冗談でもヤケになった訳でも意趣返しでもなくて」

トワダさん、よく私がプレゼントだとか、そういうことを言うじゃないですか。いつも私は、恥ずかしくて流してしまうんですけど。

たどたどしく紡がれる私の言葉に、彼は黙って耳を傾けている。

「……ずっと、好きにしてくれていいのにって、思ってて」

一拍置いて、小さく息を飲む音がした。それを聞きながら、言葉を続ける。

「プレゼントだなんて言っていちいち渡さなくたって、その、……恋人なんですから、とっくに全部、あげたつもりだったんです」

普段は照れてばかりで、はっきり言葉に出来ていないのは自分でも分かっている。そうやって素直に言えないまま、態度にだってうまく出せなくて、いつもトワダさんにリードされるばかりで。もしかして、もしかしたら流されているだけのように見えてしまっているのかもしれないけれど。

最初から、ずっと。貴方の手を取った時から、ずうっと。

「でも、言わなきゃ分かりませんよね、そんな事。だから今日、ちゃんと行動にしようって、思って」

手を伸ばして、ぎゅっとトワダさんの手を握る。引き寄せたそれにこつん、と額を当てて、どうか伝わりますように、と、祈るように言葉を紡ぐ。

「その、プレゼントって渡すにはまだまだ色々足りないんですが。普段からもう少し、素直になれるように頑張ります。子どもっぽいのも……これから努力してもっと成長します。だから……貰ってください。今から全部、貴方のものです」

そこで言葉を切って、ひとつ、深呼吸をする。

「お誕生日おめでとうございます、トワダさん。……大好きです」

――言えた。ちゃんと、全部。

そのことにホッと息をつく間もなく少し痛いくらいの強さで身体が引き寄せられ、トワダさんの胸に飛び込むような形になる。咄嗟に慌てて起き上がろうとするも、背中にしっかりと腕が回されていて身動きが取れない。何とか顔だけ上げようとすると、いささか乱暴に後頭部を押さえ付けられる。

「とっ、トワダさん……!?」

先程までの緊張なんてすっかりどこかへ飛んで行ってしまった。ぎゅうぎゅうと抱きしめられる感触にただひたすら驚きながらどうしたのかと彼に声を掛けると、ぽすん、と肩口に頭が乗せられる。

「……お前、ホンット何なんだよ……」

耳元に落ちてきた、初めて聞くような掠れた声に、思わず息を飲む。

「人の誕生日なんざたのしそーに全力で祝うわ、それが子どもっぽいかと思えば斜め上のプレゼント渡してきやがるわ、いつもいつもそうやって、……人の予想を毎回軽々飛び越えてきやがって」

ぽつぽつと言葉が落ちるごとに、回された腕に苦しいくらいに力がこもる。けれど、それ以上に、感情をありのまま音にしたようなその言葉が胸を締め付ける。苦しいような、切ないような、甘い痛み。

普段は隠されているそれに引きずられるように、自然と感情が溢れてくる。

「好きですよ、トワダさん」

「……勘弁しろって、もう」

「好きです」

「……くそ」

ゆるゆると力が抜けて、ようやく顔が上げられる。気まずそうに目をそむける彼は普段からはあり得ないほど分かりやすく照れていて、色素の薄い頬がはっきりと赤く染まっていた。あんま見んな、と子どもみたいにぶっきらぼうに言う姿が可愛くて、今度は自分からぎゅう、とトワダさんに抱きついた。

「あー、くそ、マジでらしくねえ……」

「ふふ。そんなところも、好きです」

「おっまえ、普段はそんな事ぜんっぜん言わねえ癖にここぞとばかりにイキイキしやがって……」

「さっき言ったじゃないですか。少しは素直になります、って」

なり過ぎだろ、と悔しそうに唸る彼がおかしくて、ぎゅうぎゅうと身体を寄せる。口ではぶつぶつと文句を言いながらも支えるように回される腕は優しくて、トワダさんの誕生日なのに、こんなに私が幸せでいいんだろうか、と思う。

「……そういえば、返事、くれないんですか?」

「お前、マジでイイ性格になったな……」

珍しく押され気味の彼に悪戯っぽく問いかけると、一周回って呆れたような声でため息をつく。そんな顔をしないでほしい。どうせすぐに、逆転されるのだろうから。

「いいじゃないですか、たまには私に勝たせてください」

「別に負けてねえけど。……まあ、しゃあねえか」

ふわりとやわらかく目を細めたトワダさんの手が、そっと頬にそえられる。軽く力を入れられて顔をあげると、とん、と額同士がぶつかった。

吐息が触れるくらいの距離。とろけるような淡い熱を宿した綺麗な瞳が、すぐそばできらきらと輝いている。

「お前、さっきは何か色々頑張るだのなんだの言ってたけどな」

「……はい」

「俺のために頑張るっつーのはそりゃ嬉しいが、無理して背伸びするこたねえよ」

でも、と言おうとした唇に親指が触れ、きゅっと口を閉じる。

「何も変わるなって言ってんじゃねえよ。無理すんな、って話。そもそも俺は――」

一度額が離れて、触れるだけのキスが落とされる。それだけで熱が上がり、ふるりと身体を震わせた私をくすぐったそうな笑みを浮かべたまま見つめて、静かに顔が近付く。

「――今のお前に惚れてるんだからな」

「……っ」

砂糖に浸したみたいに甘い声で囁かれて、ぞくぞくと背筋が震える。ああ、やっぱり私が勝ったままではいられない。あっという間に優位は奪われて、ほら、さっきまでの余裕なんてもうどこにもない。

「お前から求めて来たんだ。離せって言っても離してやらねえからな」

「トワダさんこそ、返品は受け付けてませんからね」

「……上等だ」

く、と低く喉を鳴らした彼が、それでこそ俺の女だと言いたげに目を細める。

「安心しろ。一生大事にしてやる」

「……はい」

手のひらが伸びてきて、目の前で手首のリボンがしゅっ、と静かに解かれる。

それを視界の隅で追いながら、もう一度やわらかく落とされたキスが段々と深まっていくのに合わせて、私はひどくしあわせな心地のままゆっくりと目を閉じるのだった。